2019年4月,成年後見制度における診断書様式が改訂された。とはいえ,多くの医師が成年後見制度とは無縁という気持ちであろう。近い将来,高齢化が加速し,認知症等で判断力が低下した方が急増した時,あなたの町で何が起こるのか想像して頂きたい。疾病や家族の形態によっては後見までいかなくとも保佐や補助が必要となる方も増えるに違いない。
本特集では,医療・福祉・司法に関わる6人の実践家に執筆をお願いした。第1部で制度の基礎知識,診断書様式が改訂に至った経緯,変更点等を整理し,第2部で疾患別に診断書の書き方を示す内容となっている。成年後見制度が当事者の権利を全て奪うかのような認識で,診断書の作成を躊躇する医師も現場には多い。その気持ちもよく理解できる。一方で,後見人が決定されるまでのプロセスには多様な関係者がかかわっており,かかりつけ医の診断もその判断材料の1つであると知ってほしい。本特集がかかりつけ医の実践に役立ち,地域の介護・福祉関係者の一助となることを期待する。
1 かかりつけ医が知っておきたい成年後見制度の基礎知識
平田 厚(明治大学専門職大学院法務研究科専任教授/弁護士)
2 成年後見制度利用促進の理念と「本人情報シート」の活用
山本繁樹(社会福祉士/精神保健福祉士)
①認知症
石橋幸滋(石橋クリニック院長)
②統合失調症
清水隆史(心明会中村病院)
③知的障害
紅谷浩之(オレンジホームケアクリニック理事長)
④高次脳機能障害
大西康史(南魚沼市民病院リハビリテーション科副院長)