川崎富作博士により「急性熱性皮膚粘膜リンパ節症候群」が初めて報告されてから50年以上が経過した。疾患発見後,悉皆の高い疫学調査に基づき疾患の自然歴が明らかとなり,病因・病態解析に基づき新規治療法が開発されてきた。無治療では25%に冠動脈瘤が形成され,2%が死亡する川崎病の予後が,現在では冠動脈瘤合併患者は2%程度に低下し,死亡例はほとんど認められないようになった。一方で川崎病の原因はいまだ不明であり,根本的な治療法は開発されていない。川崎病の患者数は年々増え続けているがその理由もわかっていない。川崎病に罹患した患者は既に20万人以上が成人となっているが,成人期の川崎病罹患患者の自然歴や診療実態はほとんどわかっていない。これら未解決の課題は,川崎病を発見し,かつまた,最大の患者発生国であるわが国がイニシアチブをとって世界に発信していく必要があろう。
1 川崎病の病因・病態
阿部 淳(国立成育医療研究センター研究所高度先進医療研究室)
2 川崎病急性期の診断・治療
鮎沢 衛(日本大学医学部小児科学系小児科学分野准教授)
3 川崎病遠隔期の診断・治療
深澤隆治(日本医科大学医学部医学科小児科准教授)