『美容医療をはじめとする保険外診療へ医師流出が止まらない現状を是正するため、厚生労働省が対策を打ち出す。内科や外科など、公的保険の対象となる一般的な診療に最低5年ほど取り組まなければ、自前のクリニックを開いても保険診療を提供できないようにする』、2024年12月4日の日本経済新聞からの抜粋です。
私の母校の大学病院で初期臨床研修を終えた医師たちが、3年目から保険外診療の美容系クリニックに就職することが増えていることを、私は本稿(No.5214)で指摘した。その危機感を厚生労働省も共有していたようで、このような施策が行われるのだと思う。
しかし、私はこの政策がある程度は効果を発揮するにしても、「保険外診療への医師流出」の根本的解決にはつながらないと思う。本当の問題は、「現在の日本の医療制度において、保険診療医が経済的成功を夢見ることができない」ことであると思うからだ。今、保険診療を行っている医療機関の多くが経営に苦しんでいる。常に、病院の上層部から経営不振を伝えられる環境にある若い医師が、保険診療医になりたがらなくても何の不思議もないと思う。
さらに2024年4月から始まった医師の働き方改革で、いわゆる医師のアルバイトが制限されるようになった。医師になればある程度裕福になれるという時代は終わったのだ。経済的成功を求める医師に保険診療医になることは、自分の希望を諦めることを意味するのだと思う。
「お金のために医師になったわけではない。患者さんや地域のためだ」と私は思っているし、そういう医療界であってほしい。しかし、10年以上病院の経営をしていると、同じ仕事内容なら、職場環境がきれいで給料のよいところに人が動くことを、私は身にしみて教えられた。ならば、保険診療を行っている医療機関がそのように変わらなければ、保険診療医が減り続けるのは止められないと思う。
私たち保険診療の医療機関が、若い医師の「医師としての理想」や「ある程度の経済的成功」をかなえてあげるだけの魅力を回復しなければ、私たちの医療を引き継いでくれるものたちがいなくなってしまうかもしれないと感じている。
小豆畑丈夫(青燈会小豆畑病院理事長・病院長)[保険診療医の魅力][経済的成功][医療制度]
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