株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

樫尾明彦

登録日:
2025-01-17
最終更新日:
2025-05-28
    • 1
    • 2
  • next
  • 「クリニックと病院の外来の違いについて」

    前稿(No.5278)にてご報告しましたが、2025年4月から常勤先をクリニックから病院に移しました。現在は、病院とクリニックの両方で、主に内科の外来を担当していますが、早くもその違いを感じています。

    新型コロナウイルス感染症の流行前後で変化がみられたとはいえ、クリニックの外来に受診する患者数は、病院の外来よりも、3〜4倍多いと考えられます1)2)3)。また、クリニックの外来を選ぶ患者さんは、医師への信頼性や医師とのコミュニケーションを重視し、大学病院の外来を選ぶ患者さんは、詳しい検査を希望する傾向があったと報告されています4)

    筆者の経験上、2025年4月の病院の一般内科外来で、walk-inのケースでも、好酸球増多症、総胆管結石疑い、IgA血管炎、髄膜炎疑いなど、今までクリニックでは、年間に1例(未満)ほどしか診た経験のない疾患に早くも遭遇しています。

    ここで、クリニックと病院の外来の違いについて比較してみます。

    クリニックの外来

    • アクセスがよい(連日受診で経過を見ることが困難ではない)
    • 迅速の各種検査や一部の採血、単純X線写真、エコーはすぐ結果が出る(それ以外の検査は即日結果が出ないことが多い)
    • 無床のクリニックでは、入院(や精査)が必要と考えられる場合は紹介が必要となる

    病院の外来

    • アクセスは(クリニックよりも)よくない可能性がある(同じ医師が連日外来でフォローしにくい可能性あり)
    • 採血結果(血算や血糖関連、生化学)やCTなどの画像検査も即日に結果が出る
    • 満床でなければ即日入院を検討できる(患者さんや家族と要相談とはなる)


    病院と比較してクリニックでは、軽症の患者さんが続く中で、重症のケースが(まだ初期症状の段階で)まぎれている可能性があり、即日で判明する限られた検査結果よりも、フィジカル(身体所見)で診断や重症の程度を判断する必要性を感じます。

    一方、病院外来では、身体診察と同時に、採血やCT検査が即日結果が出ることもあり、検査結果から診断が導かれることも少なくありません。また、クリニックから、詳しい検査や入院を検討して、病院に紹介した場合に、特に精査加療が必要な病態や疾患が見つからないときは、紹介元のクリニックに戻すことも考えられます。

    すなわち、生物心理社会(bio-psycho-social)モデル5)で、病院の(初診)外来では医学生物的(biological)な問題を取り扱う頻度が多く、クリニックでは心理社会的(psycho・social)な対応の頻度が多くなるのではと、感じました。

    そして、このように性質が異なるクリニックと病院の外来、できれば、どちらか一方よりも、両方とも診療を維持していく意義を感じています。一般内科外来を通じて得られる、いろいろな診療科の医師からのリアルタイムのアドバイス(コンサルトへの回答)は、文献や教科書を読む以上に大きな学びとなっています。

    【文献】

    1) Fukui T, et al:JMAJ. 2005;48(4):163-7.

    2) Fukui T, et al:J Community Health. 2017;42(5):935-41.

    3) Aoki T, et al:J Gen Intern Med. 2022;37(5):1211-7.

    4) Perron NJ, et al:Swiss Med Wkly. 2004;134(49-50):730-7.

    5) Engel GL:Science. 1977;196(4286):129-3.

    樫尾明彦(調布東山病院 内科)[クリニック][病院外来][生物心理社会モデル

    ご意見・ご感想はこちらより

    過去記事の閲覧には有料会員登録(定期購読申し込み)が必要です。

    Webコンテンツサービスについて

    過去記事はログインした状態でないとご利用いただけません  ログイン画面へ
    有料会員として定期購読したい 定期購読申し込み画面へ
    本コンテンツ以外のWebコンテンツや電子書籍を知りたい  コンテンツ一覧へ

    • 1
    • 2
  • next
  • 関連記事・論文

    もっと見る

    page top