前稿(No.5278)にてご報告しましたが、2025年4月から常勤先をクリニックから病院に移しました。現在は、病院とクリニックの両方で、主に内科の外来を担当していますが、早くもその違いを感じています。
新型コロナウイルス感染症の流行前後で変化がみられたとはいえ、クリニックの外来に受診する患者数は、病院の外来よりも、3〜4倍多いと考えられます1)2)3)。また、クリニックの外来を選ぶ患者さんは、医師への信頼性や医師とのコミュニケーションを重視し、大学病院の外来を選ぶ患者さんは、詳しい検査を希望する傾向があったと報告されています4)。
筆者の経験上、2025年4月の病院の一般内科外来で、walk-inのケースでも、好酸球増多症、総胆管結石疑い、IgA血管炎、髄膜炎疑いなど、今までクリニックでは、年間に1例(未満)ほどしか診た経験のない疾患に早くも遭遇しています。
ここで、クリニックと病院の外来の違いについて比較してみます。
病院と比較してクリニックでは、軽症の患者さんが続く中で、重症のケースが(まだ初期症状の段階で)まぎれている可能性があり、即日で判明する限られた検査結果よりも、フィジカル(身体所見)で診断や重症の程度を判断する必要性を感じます。
一方、病院外来では、身体診察と同時に、採血やCT検査が即日結果が出ることもあり、検査結果から診断が導かれることも少なくありません。また、クリニックから、詳しい検査や入院を検討して、病院に紹介した場合に、特に精査加療が必要な病態や疾患が見つからないときは、紹介元のクリニックに戻すことも考えられます。
すなわち、生物心理社会(bio-psycho-social)モデル5)で、病院の(初診)外来では医学生物的(biological)な問題を取り扱う頻度が多く、クリニックでは心理社会的(psycho・social)な対応の頻度が多くなるのではと、感じました。
そして、このように性質が異なるクリニックと病院の外来、できれば、どちらか一方よりも、両方とも診療を維持していく意義を感じています。一般内科外来を通じて得られる、いろいろな診療科の医師からのリアルタイムのアドバイス(コンサルトへの回答)は、文献や教科書を読む以上に大きな学びとなっています。
【文献】
1) Fukui T, et al:JMAJ. 2005;48(4):163-7.
2) Fukui T, et al:J Community Health. 2017;42(5):935-41.
3) Aoki T, et al:J Gen Intern Med. 2022;37(5):1211-7.
4) Perron NJ, et al:Swiss Med Wkly. 2004;134(49-50):730-7.
5) Engel GL:Science. 1977;196(4286):129-3.
樫尾明彦(調布東山病院 内科)[クリニック][病院][外来][生物心理社会モデル]
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