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樫尾明彦

登録日:
2025-01-17
最終更新日:
2025-06-20
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  • 「病院で家庭医として働くこと」

    本稿で「識者の眼」の執筆も最終回となります。

    2025年4月から、約10年ぶりの病院勤務となり、これまでクリニックで家庭医として働いてきた自分が、病院の中でどのように(クリニックでの)家庭医のキャリアを活かしていくことができるかを考えてみたいと思います。

    米国家庭医療学会から、家庭医療の研修を受けたホスピタリストに関する声明が出されています。その中で、依然としてホスピタリストの需要が供給を上回っている米国において、「家庭医療のトレーニングを受けたホスピタリスト(hospitalists trained in family medicine:HTFM)」は、規定の(家庭医療の)研修を行えば、入院症例の効果的なマネジメントができるとされています。

    また、HTFMと名称は異なりますが、family medicine trained hospital medicine practitionersは(HTFMとほぼ同義とも考えられます)、米国のホスピタリストの中でまだ少数派ですが(2023年)、今後家庭医が、外来だけでなく入院診療にも携わっていく意義が述べられています。

    そして、家庭医が入院診療を担当すると、地域の外来リソースを効果的に活用できるため、入院期間が相対的に短くなったという報告1)もあります。

    日本では、『病院家庭医』が、まさに病院で働く家庭医です。特に、200床未満の中小病院(コミュニティホスピタル)には、外来、病棟、在宅と幅広く勤務できる病院家庭医がマッチするとされています。

    ただし、病院で勤務をしてみて、脳神経系の症状や頭部のCT、MRIの所見の相談なら神経内科、消化器症状や内視鏡の相談、腹部画像の所見の相談なら消化器内科など、臓器別の専門医と比べると、病院で働く家庭医の専門は何なのか、一見、(病院のほかの職員には)見えにくいのではと感じました。

    入院もしくは(病院の)外来で、治療可能な病態の治療を続けていても、症状が取り切れないことがあります。そのようなケースにおいて、いったん俯瞰的に(広角レンズで)見直して、生物心理社会モデル(No.5283)を駆使し、医学生物的な抜け落ちている診断がないかを念頭に置きつつ、心理社会的な側面から、(時には漢方薬も活用しつつ)介入を探っていくのは、病院家庭医のミッションの1つと考えられます。そして、病診連携に関しても、各地域のリソースをどう活かすかを、クリニックの立場で考えられることも、クリニックから病院に移った病院家庭医の強みかとも思われます。

    「土曜日の紹介は嫌われる」という書籍がありますが、土曜日の救急外来は、クリニックからの紹介も、病院が満床でない限りは、なるべく受けるように心がけています。

    今後、病院家庭医の意義や楽しさについて、共有できるメンバーの1人になっていきたいと思っています。

    「識者の眼」の貴重な執筆の機会、大変ありがとうございました。

    【文献】

    1) Garrison GM, et al:J Prim Care Community Health. 2019;10:2150132719840517.

    樫尾明彦(調布東山病院 内科)[病院家庭医][キャリア

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