介護保険における施設サービスには、介護老人福祉施設(以下、特養)、介護老人保健施設(以下、老健)、介護医療院(介護療養型医療施設を含む)の3類型があり、医師の配置には濃淡がある。老健は100:1の常勤医が配置されており、介護医療院等は老健より手厚い配置となっている。また特養の場合、多くは嘱託医として、近隣の開業医等と提携し、週2〜3回の診療を提供している。今回は特に老健の管理医師の役割について述べてみたい。
まず通常老健の管理医師は、入所者100人の日常的な医学管理を行うことになる。要介護高齢者は、様々な疾患に複数罹患していることが多い。従って内科のみならず、泌尿器科・皮膚科・眼科・整形外科等々に対応することが求められる。さらに風邪からインフルエンザ等にいたる様々な感染症にも対応しなければならない。特に現在世界中を震撼させている新型コロナウイルス感染症のような指定感染症に対しては、予防のみならず、施設内で発生した場合の適切な対応が重要な役割となる。
また老健では、肺炎・尿路感染・帯状疱疹の3疾患に限り、「所定疾患施設療養費」という介護報酬の加算が認められており、適切な検査・診断・加療を行うことで加算が算定できる。そして現在半数以上の老健で看取りが行われており、「ターミナルケア加算」も介護報酬に設定されている。こうしてみると、老健の管理医師にはかなり広範な知見が求められていることが分かる。さらに在宅支援機能の高い強化型老健や超強化型老健の場合、周辺の急性期・回復期等の医療機関の医師や、近隣の診療所の医師との連携も重要となってくる。
そこで全国老人保健施設協会(以下、全老健)では、2014年より日本老年医学会の協力の下、老人保健施設管理医師総合診療研修制度を創設した。現在は全老健と老年医学会の共催となっており、19年までの6年間に、計1927名の受講者がこの研修を受けている。また、16年からは、診療報酬上の「総合評価加算」の要件となり、18年からは前述した所定疾患施設療養費(Ⅱ)の算定要件となっている。
このような研修を通じて、老健における医療の質の担保ができればと願っている。
東 憲太郎(公益社団法人全国老人保健施設協会会長)[医療と介護の連携④]
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