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岩田健太郎

登録日:
2020-01-17
最終更新日:
2024-10-25
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  • 「医療倫理のための科学性」

    メッセンジャーRNAが細胞内で増幅するような仕組みを組み込んだ、いわゆるレプリコンワクチン。詳しくはVoicyで述べたのでそちらを参照されたいが、要するに、

    ①増幅したRNA自体は細胞外に出ていけない(シェディングは起きない)

    ② 細胞核に入って自らの染色体を変えることもない(日本看護倫理学会が言う、「人間の遺伝情報や遺伝機構に及ぼす影響」はない)

    この2点を指摘するだけで十分だろう。日本看護倫理学会が主張する懸念は間違っている。

    もちろん、人間は間違える存在だ。だが、自らの誤謬を認めず、頑なに自説に固執し、非科学的な主張を繰り返す人たち、団体に倫理を語る資格があるだろうか。僕は科学認識、ファクト認識ができない人たちには、そのような資格はないと思う。今のままであれば、日本看護倫理学会は解散すべきで、そのレゾンデートルは失われている。

    思い出すべきはハンセン病だ。ハンセン病が医薬品で治療可能であり、日常生活で患者から他者に感染する可能性はほとんどないことはずっと以前からわかっていた。それでも当時の厚生労働省は患者の隔離政策を廃止しようとせず、1996年まで「らい予防法」は継続された。2024年現在でもハンセン病患者への偏見は根強い。非科学的な考え方こそが非倫理的な行為を正当化するのである。そして現在、レプリコンワクチン接種者を入店拒否するような輩がいる。やっていることはハンセン病患者差別と同じである。

    ちなみにこの「ほとんど」というのは、科学的な言説であり、科学の人は「絶対にない」とは言わないのである。既存の知識が未来の知見で覆されることはあるからだ。だからといって、現存する知識を最大限活用し、ベストを尽くすことこそが倫理的な営為であり、現時点での知見をガン無視するのはもちろん非倫理的な考え方だ。

    閑話休題。

    倫理を科学のアンチテーゼのように言う人がいるが、それは間違いだ。無知無学が差別の原因となることはあり、我々は差別を回避するために必要な知識やただしい思考プロセスを学ぶ義務がある。

    科学性の担保は倫理の前提なのである。

    岩田健太郎(神戸大学医学研究科感染治療学分野教授)[レプリコンワクチン][ハンセン病

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