株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

山口育子

登録日:
2025-01-16
最終更新日:
2025-06-20
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  • 「薬局薬剤師に期待すること」

    私たちCOMLが活動をスタートした1990年当時は、10%程度だった医薬分業率が、今や80%を超えています。多くの患者にとって、薬局は身近な存在になったはずです。ところが、薬局薬剤師の役割や、存在意義を理解している患者はきわめて少ないのが現状です。

    ここ数年、同じ薬剤師であっても、病院薬剤師と薬局薬剤師では患者に見える姿が異なってきています。病院薬剤師は病棟配置が進み、5領域の専門・認定薬剤師の数が年々増えていることもあって、チームの一員として患者に見える存在になっています。一方、薬局薬剤師はと言うと、薬局自体の二極化が進んでしまった気がしてなりません。一部には、積極的に患者に関わり、地域に出て在宅医療に取り組む薬局がありますが、多くの薬局では、調剤偏重から抜け出せていないように見えます。

    薬剤師の業務は、非常に多岐にわたります。しかし、その大半はバックヤードで行われているため、患者には業務の内容が見えてきません。それだけに、薬剤師の役割とは何かを患者に説明しない限り、理解が深まらないのです。

    私は、一般の方に講演する機会があると、薬剤師の基本的な役割として、①薬剤情報提供(服薬指導)、②薬剤服用歴管理、③疑義照会、④残薬整理、⑤服用期間のフォローアップを必ず伝えるようにしています。なぜなら、入院治療から外来治療へとシフトしてきている中、安全な薬物療法のためには、薬剤師の協力が欠かせないと考えているからです。そのためには、患者が薬剤師の役割を理解し、薬物療法のパートナーとして位置づける必要があります。

    特に②と③の説明をすると、多くの人はかかりつけ薬局を決めて一元管理をする必要性を理解してくれます。処方箋の3%で疑義照会が行われているにもかかわらず、処方変更がなければ、恐らく疑義照会したこと自体を患者に伝えていないのでしょう。何に疑問を抱いて疑義照会をしたのか、処方変更に至らなければ、その理由は何だったのかを患者に伝えれば、薬剤師が役割を果たしていることを理解し、安心につながると思います。

    また、④では、飲み忘れがあると咎められるのでは、と身構える患者もいます。しかし、なぜ残薬があるのか理由を確認し、改善のための方策を考えたり、医師に患者が服用しやすい薬の処方提案をしたりする役割があることを伝えれば、患者自身の残薬への見方が大きく変化します。

    そして、⑤は、本来、薬剤師が当たり前に取り組む業務だと私は考えていました。なぜなら、調製し、取り揃えた段階ではまだ何も始まっていません。患者が薬を服用、使用しはじめて、初めて作用や副作用が生じるわけですから、専門家であれば“その後”が気になるのは当然だと思います。それが法改正によって、薬剤師の役割と明確に位置づけられました。この役割は、患者の薬剤師を見る目が大きく変化するチャンスだと期待しています。

    薬局薬剤師の存在意義が疑問視される中、本気で変わることができるかが問われる最後の瀬戸際にきていると感じています。多くの患者が薬剤師の役割を理解し、「薬局薬剤師はいなくてはならない存在」と思ってもらえること、つまり国民を味方にすることができるか否かにかかっています。

    山口育子(認定特定非営利活動法人ささえあい医療人権センターCOML理事長)[医薬分業][薬剤師

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