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藤原佳典

登録日:
2024-02-19
最終更新日:
2025-01-27
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  • 「地域包括ケア時代の高齢者就労とその多面的意義⑪─フレイル高齢者にも適した、ゆるやかな『しごと』」

    前稿(No.5250)では、高齢者の就業支援機関であるシルバー人材センターにおける調査からプレフレイル、フレイル高齢者はロバスト(=非フレイル)な高齢者と比較して、労働災害が多く、安全就労を学ぶ機会を利用していないという実態を紹介した。今回はプレフレイル、フレイル高齢者に適した就労について考えてみたい。

    一般的な就労のように雇用契約に縛られず、高齢者が地域で役割を持って暮らし続ける自立支援の施策として、厚生労働省が推進している「就労的活動」がある。

    たとえば、近所のスーパーマーケットで高齢者の買い物の手助けをする、馴染みの飲食店で配膳・下膳や食器洗いの手伝いをする、企業の商品の仕わけや包装をする、農作物を道の駅等で販売するなどして、その対価を謝礼や謝品でもらうといった有償の活動を意味する。

    就労的活動の事例は、NPOや協同組合などの社会課題解決型中間支援組織が介在する場合にもみられる。こうした就労的活動はフレイル・要支援高齢者等に対する「介護予防・日常生活支援総合事業のガイドラインについて」の一部改正においても明示され、様々な民間企業と連携した高齢者の多様な社会参加・社会貢献のモデルとして推奨されている。

    今後は、元気な高齢者の介護予防・フレイル予防の視点のみならず、フレイルになっても、孤立せずに社会的役割を維持し、その人らしく働き続けられる仕事や作業とは何かを精査し、適材適所にマッチングすることが求められる。

    この種の取り組みについては、近年、英国から端を発した、社会的処方(social prescribing)にも通じる。社会的処方は医療専門家が患者の健康とウェルビーイングを改善するために、非医療的アプローチを提供するものであり、リンクワーカーと称するコーディネーターを介し、地域コミュニティでの様々な趣味サークルや作業等の社会活動をマッチングすることとされる。

    わが国では、フレイル患者の診療やMCI・認知症患者の診断後支援等の機会において、高齢者のいきがいと自立支援をめざして、かかりつけ医とコーディネーターや地域包括支援センターが連携することによるモデルの構築に期待が寄せられる。

    藤原佳典(東京都健康長寿医療センター研究所副所長)[高齢者就労][就労的活動]

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