昨今の論文作成は、昔のように何をどうしたらよいかから考えるのではなく、指導者が伴走しながら立ち止まるようなことはせずに、サクサクと書き上げていると思います。ただ、そうすると、若手の先生は深く考えることをしない、本人は考えているつもりでも論文を早くアクセプトさせて楽になりたい、という想いからさっと仕上げようとしてしまいます(これは自分もそうでした……)。
筆者自身、論文作成の指導をする際、この深く考える、一旦立ち止まるタイミングを2つ置いています。
1つ目が、論文作成の過程で考察の機序、メカニズムを執筆するところです。なぜこの結果に至ったのか、そのメカニズムについて結果をもとに考えます。メカニズムとして考えらえるものが解析結果になければ、追加解析を行うこともあります。この部分を深く考えることができる先生は、経験上、論文作成が好きになっていく先生だと思います。ここでの反応を筆者自身はアカデミアの向き、不向きとして見るようにしています。
2つ目は、査読に対する返答の部分です。査読者からの指摘は様々なパターンがあり、時にまったく的を得ていないコメントや、場合によっては再解析から書き直しといった指摘を受けることがあります。この部分の対応は、若手の先生では、何をどう返答してよいかわからなくなることが多いです。この際、すぐに答えを指導者に求めるのではなく、間違っていてもよいので、自分の言葉でしっかりと書いてみることが重要です。このようなときにしっかりと立ち止まって、じっくりと考えてほしいと思います。
この考えるときこそが、論文作成からアクセプトまでの期間で、研究者として伸びる時期です。ただこの部分の重要性を気づかせるのはきわめて難しく、筆者自身も明確な答えを持っていません。しっかりと考えましょう、とか、論文検索を丁寧にしましょう、と言っても気づかない場合もあります。若手の先生から答えを求められても、あえて返答するのを遅らせたりもしてもよいかと思いますが、何が正解かはこれからも筆者自身が追い求めていきたいと思います。
ランニングでもある程度のスピードで走っているときに立ち止まって(しかもゴールが近い場合)、またスタートするのは大変しんどいです。しかし、昨今の論文作成にかける期間が短くなっている中で、しっかりと立ち止まって深く考える(時間をかける)ポイントがあり、その重要性を指導者は若手の先生に気づかせてあげる方法を追い求めていく必要がありそうです。
一二三 亨(杏林大学医学部総合医療学救急総合診療科准教授)[論文作成][メカニズム][指導方法]
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