AI(人工知能)は産業革命として大きく注目されており、我々医療界においてもAIの活用により、医師にとっては負担軽減、患者さんにとっては医療の質の向上が大きく期待されている。例えば、専門知識を有さない医師であっても、AIを活用することにより専門医と同等の診療を行える可能性もあり、幅広い領域をカバーする開業医にとっても有用なツールになる可能性がある。2019年3月28日に厚生労働省の「医師の働き方改革に関する検討会」より報告書が出された。報告書によると、2024年4月に改正労働基準法に基づいて時間外労働は厳しく制限されることから、病院においてもAIに期待される役割は大きい。では将来的にAIに何を期待できるのだろうか?
厚生労働省の「保健医療分野におけるAI活用推進懇談会報告書」(2017年6月27日)によると以下が挙げられている。
○診断の場面では、AIを応用した高精度な予測によって、従来では発症するまで見つけることができなかった疾患であっても、発症前に診断・治療を受けられるようになる可能性がある。
○治療の場面では、AIを活用することによって、個々人の状態に応じた治療(薬剤の選択や副作用の回避等)を受けられる個別化医療の実現につながる可能性がある。
○患者・国民の日々の暮らしの場面では、ウェアラブル端末等を通じて得られたデータやカメラで撮影された画像を、AIを用いて解析することによって、在宅でのモニタリングや見守りを効果的に行うことができる可能性がある。何か異常があれば速やかにこれを検知し、必要なタイミングで、患者・国民に医療機関への受診を促すことが可能となるだろう。
特に診断系医療機器においては、ディープラーニング技術の進展により疾患名候補や異常所見候補を提示する機能の質の向上が期待でき、医師による診断の見落としの予防やさらにはAIを用いない医師よりも診断精度が高まる可能性がある。またレントゲン、CT、MRIだけでなく、主観的要素の強い超音波検査における応用や眼科領域、皮膚科領域においても開発が進展している。
近い将来、AI技術を当たり前に医療現場で使用する時代が来ると考えられる。例えば健診の胸部X線検査もAIの活用により、見逃しのリスクをかなり減らすことができそうである。さらにAIを電子カルテに連結させれば、新たな価値を創出することが可能となる。電子カルテの過去から現在までのデータを基にして、疾病候補の提示だけでなく、治療方法の提案、さらには避けるべき薬剤の警告等を出すことができれば有用性はかなり高そうだ。
次回はAIに課題はないのか、医師の業務を置き換える可能性はあるのかについて考えてみたい。
宮田俊男(みいクリニック代々木院長、厚生労働省参与、日本医師会医療政策会議委員)[AI][医師の働き方改革]
過去記事の閲覧には有料会員登録(定期購読申し込み)が必要です。
Webコンテンツサービスについて
過去記事はログインした状態でないとご利用いただけません ➡ ログイン画面へ
有料会員として定期購読したい➡ 定期購読申し込み画面へ
本コンテンツ以外のWebコンテンツや電子書籍を知りたい ➡ コンテンツ一覧へ