株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

稲葉基高

登録日:
2025-01-15
最終更新日:
2025-02-12

「災害対応における新たな挑戦〜地方自治体支援の必要性とDGATの提案」

まだ記憶に新しいところですが、2024年元日に発生した能登半島地震は、多くの地域に大きな被害をもたらしました。私はNGOピースウィンズ・ジャパンの「空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”」のリーダーとして派遣され、被災地での支援活動を行いました。

特に被害の大きかった自治体の1つである珠洲市で、1月2日より支援活動を開始した際に痛感したのは、被災した地域の行政職員が大きな困難に直面しているということでした。地方自治体の職員もまた被災者であり、家や家族を失った悲しみの中、限られた人員で膨大な業務を遂行する必要があります。その負担の大きさを目の当たりにし、地方自治体を支援する新たな体制の必要性を強く感じました。

日本では、災害時の医療支援において厚生労働省が主導する災害派遣医療チーム(disaster medical assistance team:DMAT)が重要な役割を果たしています。私自身もDMAT隊員ですが、医師、看護師、業務調整員で構成され、大規模災害時に迅速に現場に入り、現地の医療体制を支えています。DMATは阪神・淡路大震災を契機に国主導で整備され、現在では被災病院や保健医療・福祉分野の行政支援としてもその成功を収めています。DMATの活躍は災害時の迅速な対応における重要な柱となっていますが、災害対応は医療に限られるものではありません。

そこで、DMATの成功をふまえ、行政支援に特化した「disaster government assistance team(DGAT)」の設立を提案します。DGATは、災害対応の経験を持つ官民の専門家で構成され、被災した地方自治体を支援することを目的としています。このチームは、地方自治体の負担を軽減し、現地のイニシアチブを尊重しつつ、効果的な支援を提供することをめざします。また、ITツールを活用することで、効率的な情報共有や意思決定を支援し、迅速な対応が可能となるでしょう。

現在、政府では防災庁の設立が議論されています。この防災庁がDGATのような専門チームを組織する役割を担うことで、災害対応能力のさらなる強化が期待されます。DGATの設立により、災害時における地方自治体の負担が軽減され、迅速かつ効果的な支援体制が実現すると考えます。

稲葉基高(ピースウィンズ・ジャパン空飛ぶ捜索医療団“ARROWS”プロジェクトリーダー)[災害支援][disaster government assistance team]

ご意見・ご感想はこちらより

過去記事の閲覧には有料会員登録(定期購読申し込み)が必要です。

Webコンテンツサービスについて

過去記事はログインした状態でないとご利用いただけません  ログイン画面へ
有料会員として定期購読したい 定期購読申し込み画面へ
本コンテンツ以外のWebコンテンツや電子書籍を知りたい  コンテンツ一覧へ

関連記事・論文

もっと見る

page top