10月27日に実施された衆議院選挙にて自公連立政権が過半数を失い、野党が躍進した結果、安定的に多数を占める政権が存在しないというめずらしい政治環境が誕生した。メディアでは主に税制改革や政治改革が賑やかに論じられているが、社会保障に関する議論はまだ低調のように思える。
ただ、今回躍進しキープレーヤーとなった野党第3党である国民民主党の選挙での政策を確認すると、「初期医療(一次医療)提供体制のあり方の見直し」という項目があり、そこでは「過疎地域を中心とした医療の経営基盤を支えるため、『日本版GP制度』ならびに診療報酬の包括支払制度や人頭払い制度等について検討する」と記載されている。この日本版GP制度は「GP:国の保健医療制度と契約をした一般医/家庭医、包括支払制度:従来の診療行為に対する請求ベースでの支払いから、診療件数に関わりなく医療圏の人口単位で診療報酬を包括してGPに支払う」と説明されており、英国型GPの日本版であることがよくわかる。
また、野党第1党である立憲民主党の政策でも、数ある項目の1つに「予防中心の医療を実現するため、日常からの健康管理・相談や総合的な医療提供(プライマリ・ケア)機能を持つかかりつけ医を法制上定義し、事前登録可能な『日本版家庭医制度』を創設します」とある。さらに、「具体的には、患者が任意で『家庭医』に登録する制度を創設します。『家庭医』は一定の研修を修了することを要件とし、患者に対する医療提供の司令塔として、地域におけるプライマリ・ケアその他の健康の維持・増進のための措置、専門的な医療機関との適切な連携、患者に関する医療情報の一元把握といった役割を果たします。制度導入にあたっては、国民への情報提供・開示の強化等、必要な環境整備を進めます」と詳述されている。ちなみに、野党第2党である日本維新の会の政策ではプライマリ・ケアに対する言及はない。
もちろん自公連立政権が少数与党として継続し、参議院では与党多数の状況なので、こうした政策がすぐに実現する見込みはないが、与党と野党が政策ごとの協議を行うことが当たり前になる政治環境で、この日本版GP制度や日本版家庭医制度が議論の対象になる可能性が出てきたことは素直に歓迎したい。国民の代表として活動する政治家が日本のプライマリ・ケアのあるべき姿を論じることで、メディアが取り上げる機会も増えるだろう。それがプライマリ・ケアについての国民的議論につながることを心から期待したい。
草場鉄周(日本プライマリ・ケア連合学会理事長、医療法人北海道家庭医療学センター理事長)[総合診療/家庭医療]
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