近年、国内においては、本来必要なワクチンが入手困難となる事例が多発している。その理由は、災害、製造メーカーによる出荷制限、急激な需要増加など多岐にわたるが、いずれの場合も各医療施設は在庫確保や予約調整に奔走する必要に迫られ、被接種者は実際の接種が延期になってしまうなど、社会的混乱が発生している。
同様のワクチン供給不足は、以前から欧米でも問題視されており、その対策として、米国においては、一部の小児用ワクチンをVaccines for children(VFC)の予算を用いて6カ月分備蓄している。英国においても政府が製造メーカーからワクチンを購入する際に、単独メーカー供給の場合は6カ月分、2社以上供給の場合は3カ月分を備蓄することを契約するなど、備蓄確保対策が導入されている。
国内においても、多くのワクチンは製造メーカーにより2カ月分程度備蓄されているが、それだけでは安定供給を達成できていないのが現状である。厚生労働省は、備蓄期間を4カ月に延長することや、現在は重複せずに行っている自家試験、国家検定、最終製品化を同時並行して行うことによるリードタイムの短縮による迅速な増産体制の構築など、国内におけるワクチンの安定供給実現に向けた対策を検討している。
私見としては、そのような対策に加え、我々医療従事者はワクチン不足の報道がなされても、必要以上に在庫を確保することを自粛し、自施設の接種実績に基づいたワクチンのみを発注するなど、冷静な対応をすることが重要であると認識している。その際、当然、独占禁止法に抵触しない範囲で、なるべく最新かつ正確な各社の流通計画の公開など「ワクチン流通の見える化」が達成されていることが前提条件となる。
国内ワクチンの安定供給の実現には、備蓄体制の確保、速やかな増産体制の確立、医療従事者の冷静な対応など、多方面からのアプローチが必要である。
勝田友博(聖マリアンナ医科大学小児科学准教授)[ワクチン流通の見える化][備蓄確保]
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