日本病理学会が主導した病理画像(P-WSI)情報集積プラットフォーム事業(JP-AID)は、病理診断支援のための人工知能開発をめざし行われた(2018年6月〜2021年3月)。
病理組織画像のデジタルデータが多く収集され、公開されている。これは、大きな成果である。欧米で病理診断支援AIが医療機器として認可されつつあるし、日本でも研究は進んでいる。スタートアップ企業もいくつか誕生している。
病理AIの基盤となる、病理画像の標準化研究|先端医療開発センター
Medmain |メドメイン株式会社
日本病理学会も病理診断支援AIの手引きを公表するなど、少しずつ病理診断にAI導入の機運がみられる。
しかし、2020年代も半ばになろうとしている今になっても、大学に所属していないいち病理医である私が利用可能な病理診断支援AIはまだない。期待感ばかり高まり、病理医志望の研修医が減少する中、まだまだ今まで通りの病理診断が主体だ。
こうした中、病理医の高齢化が大きな影をなげかけている。60代以降の病理医が徐々に引退し、あるいは健康的な問題で急に診断ができなくなるといった事態を見聞きするようになった。
これがAI実装前夜、まさに「過渡期」の現実だ。
現在昨今のAIへの期待はバブルだったのではないかという意見を見聞きするようになった。開発競争が激化する中、有力なサービスはいまだに生まれていないという指摘もある。
病理診断はAIがすべてやってしまうなどというのは、まだ先の話であり、私たちは期待に踊らされていたのではないか。確かに長期的にみれば、AIが医療を変えるのは間違いがない。しかし2020年代はまだ、従来の医療でなんとかやりくりしていくしかないのではないか。
私たちはこの「過渡期」を乗り切るためにどうすればよいのか、希望的観測を捨て、真剣に考える時期が来ているように思う。
榎木英介(一般社団法人科学・政策と社会研究室代表理事)[病理診断][AIへの期待]
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