2025年7月24日の薬事審議会にて、「9価HPVワクチン」の効能効果に肛門がんの予防が追加され、男性にも適応が拡大されることが了承されました(近く正式承認される見通しです)。
HPV(ヒトパピローマウイルス)ワクチンは、子宮頸がんや肛門がん、中咽頭がん、尖圭コンジローマなどの原因となるHPVの感染を防ぐワクチンです。HPVは性交渉により感染しますが、約8割の人が感染することがあるほど、だれもが感染する可能性があるため、初めての性交渉よりも前にHPVワクチンを接種することが重要です。
HPVワクチンには、2価、4価、9価の3種類があり、9種類のHPV型の感染を防ぐことができる9価が最も有効性が高いです。しかし、これまで男性に適応があったのは4価のみでした。
女性は、小学校6年生〜高校1年生を対象に定期接種化されており、9価HPVワクチンを無料で接種することができます。しかし、男性は、年齢にかかわらず自費での接種となり、かつ、9価は男性への適応がないため、接種することはできますが、万が一健康被害が生じても救済の対象とならない、という状況です。東京23区など、一部の自治体で独自に男性も無料でHPVワクチンを接種することができますが、現状は4価のみです。
世界的には、約50カ国で男性のHPVワクチン接種が公費助成で行われています。
費用対効果としては、男女ともに15歳未満で1回目を接種し、2回で接種完了するのが理想的です。1回目が15歳以上での接種の場合は3回接種となり、現状は定期接種の対象者の中に、2回接種の人と3回接種の人が混在しており、非常に煩雑です。全員が2回接種となれば現場の運用もシンプルになりますし、費用対効果も高くなります。これを機に、日本でも男性のHPVワクチンが、定期接種化されることに期待します。
稲葉可奈子(産婦人科専門医・Inaba Clinic院長)[産婦人科][HPVワクチン][適応拡大]
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