文部科学省は2024年10月31日に「令和5年度児童生徒の問題行動・不登校等生徒指導上の諸課題に関する調査結果について」を公表した。
小中学校の不登校児童生徒数は34万6482人と過去最高で、中学生では1000人当たり67.1人(=約15人に1人)が不登校だった。自殺者数は397人と高止まりしており、中学生の自殺者は増加していた。
不登校や自殺は、背景に様々な困難を抱える子どもたちのSOSの声であり、そこに至る前に支援につなげられるよう、学校への専門職〔スクールカウンセラー(SC)、スクールソーシャルワーカー(SSW)〕の配置が進んでいる。
SCは1995年に配置が始まり、2023年には全国3万1872校の公立小中高校のうち97.2%で年1回以上SCが活動している。心の専門家として、学校だけでは対応が難しかった子どもからの相談だけでなく、保護者や教員のカウンセリングやコンサルテーションのほか、事件や事故等の緊急対応における被害児童生徒の心のケアも担う。
SSWは2008年より配置が始まり、2023年には全国の公立小中高校のうち76.1%でSSWが活動している。SSWは制度や法律を活用して、子どもと子どもを取り巻く環境に働きかけ、家庭、学校、地域の橋渡しをしながら子どもの抱えている問題に関する現実的課題の解決に向けて支援をしていく。学校を拠点に、学校の外にアウトリーチし、子どもに関わる様々な人や機関と学校との連携のハブとなり、医療機関への同行受診なども行うことがある。
SCは比較的認知度も高くなってきており、医療者の中でも学校の中の心理専門職としての認識が進んでいると思われる。しかし、SCが家庭を訪問したり、医療機関に同行受診したりするということは稀で、あくまで校内でのセラピストとしての役割が中心となる。一方で、SSWはソーシャルワークを行う福祉専門職として、校外も含む子どもを取り巻く環境に能動的に働きかける。SSWについてはまだ十分な認識とその役割の理解が進んでいるとは言いがたい。
不登校や自殺者数が増加する背景には、子どもや家族の背景にある健康の社会的決定要因をはじめとする様々な福祉的要因が存在する。子どもに関わる医療者にとって、学校との連携を進めていく中で、学校だけでなく、家庭や地域に働きかけ、子どもを取り巻く環境を整えられるSSWは、これから非常に重要な役割を担っていくと考えられる。
小橋孝介(鴨川市立国保病院病院長)[スクールカウンセラー][スクールソーシャルワーカー]
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