国立社会保障・人口問題研究所によると、世帯主が65歳以上の単独の高齢者世帯は、2020年の738万世帯(全世帯の13.2%)から2050年には1084万世帯(同20.6%)にまで増えると予想されている。これは、およそ5世帯に1世帯が、65歳以上の独居高齢者世帯ということになる。
また、未婚化や兄弟人数の減少による小家族化と高齢化の影響により、家族や親族以外の人による単身高齢者・身寄りのない高齢者への支援ニーズが高まっている。
高齢者の単独世帯の増加に伴い懸念されているのは、身寄りのない高齢者に対する尊厳ある支援の確保である。身寄りのない高齢者には、単に頼れる子ども、親戚などがいない人たちだけではなく、何らかの事情があり、親族に頼れない人たちも含まれる。そして、身寄りのない高齢者は、介護施設入居時や入院時の身元保証人がいない、頼れる人がいないことによる精神的な不安や孤独を抱える、体調の変化に気づきにくい、意思判断力の低下による金銭管理や各種支払いを適切に行うことができない、葬儀やお墓の手配をする人がいない、死亡後の手続きや遺品整理をする人がいない、遺産が本人の意図しない形で相続される可能性がある、といった不安や課題が挙げられる。
上記の現状をふまえ、家族や親族に変わって支援する高齢者等終身サポート事業者の需要は増している。高齢者等終身サポート事業については、サービス内容が多岐にわたるが、主に、①身元保証等サービス、②死後事務サービス、③日常生活支援サービス、がある。以下に、その具体例を示す。
医療施設への入院の際の連帯保証、入院・入所・退院・退所時の手続代行、死亡または退去時の身柄の引き取り、緊急連絡先の指定の受託および緊急時の対応
葬儀や火葬等に関する事務、収蔵・永代供養に関する手続代行、費用精算・病室等の整理・家財道具や遺品等の整理、行政機関での手続関係(後期高齢者医療制度資格喪失届等)に関する代行、ライフラインの停止(公共料金等の解約)に関する手続代行
通院の送迎・付き添い、買い物への同行や購入物の配達・生活に必要な物品の購入、日用品や家具の処分、病院への入院や介護施設等への入所の際の移動(引っ越し)および家具類の移動・処分、介護保険等のサービス受給手続代行、生活費等の管理・送金、不動産・動産等の財産の保存・管理・売却等に関する手続代行
上記で示したように、身寄りのない高齢者に対する様々な課題に対し、高齢者等終身サポート事業者の役割は非常に大きい。また、サービスの内容から事業者と医療機関や介護機関との連携が必要不可欠であることがわかる。しかし、高齢者等終身サポート事業についての十分な理解や連携は、不十分なのが現状である。本連載を通して、読者の皆様に、高齢者等終身サポート事業についての理解を深めるきっかけになればと思う。
岡江晃児(一般社団法人愛の会主任ソーシャルワーカー、社会福祉士)[高齢者等終身サポート事業][ソーシャルワーカー]
過去記事の閲覧には有料会員登録(定期購読申し込み)が必要です。
Webコンテンツサービスについて
過去記事はログインした状態でないとご利用いただけません ➡ ログイン画面へ
有料会員として定期購読したい➡ 定期購読申し込み画面へ
本コンテンツ以外のWebコンテンツや電子書籍を知りたい ➡ コンテンツ一覧へ