株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

今村 聡

登録日:
2025-01-09
最終更新日:
2025-06-18
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  • 「死亡診断書の電子化による有効活用と記載内容の見直し」

    患者の生死に関わる臨床医であれば、死亡診断書(以下、診断書)を記載(いまだに多くの診断書は、手書きで記載されているのではないだろうか)した経験があると思う。診断書はこれまで記載項目のわずかな修正はあっても、大きな変更はない。医師が記載し、遺族に交付、遺族は診断書とともに死亡届を自治体に届ける。自治体は、診断書の死因部分を電子化して厚生労働省に送り、統計法に基づいて厚生労働省が日本の死因統計をまとめている。診断書は、地方法務局に紙ベースで蓄積されている。

    ここで問題がいくつかある。遺族が診断書を届けなければ、亡くなった方は法的には生存していることになり、年金の不正受給のような問題につながる。自治体に届けられた手書きの診断書は、自治体職員が電子化するが、医師でない職員が医師の記載内容を判別することができない場合や、原死因として適切かどうかを判断することができない場合がある。

    医師が診断書を電子化して記載することで、遺族にはプリントアウトしたものを渡し、自治体の事務の効率化が図られる。そして、その日のうちに、どのような死因で亡くなったかという疫学的情報が即時的にわかる。さらに、厚生労働省に電子的に送付された診断書から、死因以外の情報を行政で活用できるのではないかと考える。

    超高齢化社会の現代において、100歳の死後の手続きを、80歳に近い高齢者や会社で責任ある立場の遺族が、10カ月にわたって行わなければならない。これらの手続きを行った人であれば、大変さは理解できるであろう。診断書の電子化を前提として、情報を多方面で活用することができれば、現状を大きく変えることが可能となる。死亡情報は、厚生労働省だけでなく、法務省、総務省、金融庁、財務省など、多くの行政に関わる情報であるため、法的な課題はあると思われるが、国として課題を整理し、診断書の電子化と、情報の有効活用を検討すべきではないだろうか。

    2021年に閣議決定した「死因究明等推進計画」の中に、診断書の電子化の記載があるが、2024年の見直しにおいて特に進展はない。まずは診断書の電子化を早急に進め、その有効活用について検討すべきと考える。その際、診断書の記載内容についても、新たな項目の追加を行うことが必要である。

    医師、看護師等の国家資格を有する方が亡くなった場合、遺族がそれぞれの行政に届けることで医師ならば医籍登録から抹消される。しかし、そのような手続きを知っている遺族は少ないため、2023年時点で、医籍および歯科医籍に登録されている人数は約80万人となっている。診断書に国家資格の欄を設けるだけでも、このような統計上の不備が整備される。また、現在、予防のためのこどもの死亡検証(CDR)の検討が開始されていると聞く。診断書にそれに関する記載を設けることも検討に値すると考える。

    今村 聡(医療法人社団聡伸会今村医院院長)[死亡診断書

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