株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

西 智弘

登録日:
2021-01-20
最終更新日:
2024-05-02
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  • 「フェンタニル貼付中の痛みには」

    当院では緩和ケアの救急も受けつけているが、そこでは定期的に、感覚としては月に1件くらい「フェンタニルテープを増やしても痛みが取れないので何とかしてほしい」という主訴の患者さんが紹介されてくる。

    もう少し具体的に言うと、例えば乳癌・骨転移のある60代の女性で、転移部のところが持続的に痛い、という場合。前医の処方でフェンタニルの1日用テープが処方されるが、痛みは治まらない。では2mg、次は3mg……と増やしていくうちに貼付の総量が12mgくらいになって、患者さんは強い眠気でふらふらな一方で「痛みは全然よくなりません」みたいなパターンで救急搬送されてくる。

    こういったパターンのとき、どうすればよいだろうか?

    結論から言えば、「オピオイドの内容を変更する」ことがベストだ。フェンタニルは確かに経口内服ができない人や、便秘が強い人などにはよい薬ではあるが、人によって吸収率が異なるなどもあり、効果が安定しないことも多い薬である。それは同様に長時間に作用するヒドロモルフォンもそうで、癌性疼痛に対しこれら薬剤を漫然と増量だけしていくと「眠いけど、痛い」状態を作り出してしまう。

    その場合は、まずモルヒネやオキシコドンに変更することを検討して欲しい。さらに、オピオイドの換算表に従って変更する場合も、等価で交換するのではなく、50〜60%くらいを目安に交換した方がよい(たとえばフェンタニルテープ8mg貼付していた場合はモルヒネだと等価なら240mgであるが、120mgくらいにしたほうがよいよ、という意味)。これは、フェンタニルの吸収率の個人差を考慮してのこと。つまり、「フェンタニルの吸収が悪いから痛みが取れていなかった」だけの場合、等価でモルヒネに変更してしまうと過量投与のリスクがあるからだ。そのうえでレスキューをきちんと処方しておき、1日に何回でも使ってよい、という指示にしておく。

    基本的に、オピオイドには効果の優劣はない。その意味ではどれを使用してもよいのだが、それはどのオピオイドを使っても同じ効果が得られることを意味しない。オピオイドのキャラクターを理解して、適切な場面で適切に使用しなければ、当然のように効果は得られないのである。

    西 智弘(川崎市立井田病院腫瘍内科/緩和ケア内科)[オピオイド][薬剤変更]

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