私のSNSに実際に寄せられた言葉から、今どきの医師の本音とその背景、今後について考察します。
医療と医学を取り巻く環境が変化する中で、現代の若手医師にとって「医局」はどのように映っているのでしょうか。医育機関附属病院に勤務する医師は全体の約17%。関連施設で働く医師も含めれば、現在も多くの医師が医局と接点を持っていると推察されます。
しかし、「医局が嫌い」「時代遅れ」といった声がSNS上で散見されるのも事実です。こうした批判をどこまで深刻にとらえるべきか議論のわかれるところですが、医局制度が今後も有効に機能するためには、時代に即した進化が恐らく必要だと感じています。
Xで、私は「医局ネキ」と呼ばれています(ネキ=姉貴のネットスラング)。そう呼ばれるようになったのは、医局長として発信した嘆きの投稿が大炎上したことがきっかけです。「専門医や学位取得後しばらくは、give&takeの精神で研修医・専攻医教育や地域医療などに貢献してほしい」との趣旨でしたが、「専攻医や大学院生時代に十分にgiveした、これ以上搾取するな」と、厳しい声を多数頂きました。
このように、Xでは医局に関する様々な批判が寄せられます。特に多いのは「望まない異動」「大学病院での低すぎる給与」に関する声です。背景には、共働き家庭の増加に伴う転居の困難さ、医師全体の給与水準の伸び悩みに伴うキャリアや将来賃金への不安などがあると考えています。
一方で、大学病院の機能として「医師派遣機能」が強調されつつあります。大学医局は若手医師を集め、教育し、地域に送り出す役割を今後ますます担うことが期待されています。
このような現状の中で、医局制度はどう進化すべきでしょうか。医局側には、若手医師が将来に希望を持ちキャリアを築けるような環境整備が、ますます求められているように考えます。若手医師にも、目先の損得だけでなく、今後医療が大きく変化する可能性を考えて、長期視点での人脈形成やキャリア展望を考える姿勢が必要のように思います。そして振り返れば、私の「give&take」という表現は多分不適切で、「pay it forward(次世代への恩送り)」とすべきだったと反省しています。
大学病院での医師の給与に関しては、急性期病院の経営難が深刻化する中、医局という立場で対応できる範囲は限られつつあります。ただし、この問題は認識されており、改善に向けた検討も進められていることはお伝えしたいと思います。
医局制度はいまも、日本の医療と医学を支えるインフラであり、地域医療、研究、教育の担い手としての役割が期待されています。これからの時代を見据え、若手医師と医局が歩み寄り、共によりよい未来をつくっていけるように進化できることを願っています。
三澤園子(千葉大学大学院医学研究院脳神経内科学准教授)[SNS][医局][pay it forward]
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