国連の女性差別撤廃委員会が日本の女性政策に対し4度目の勧告を行った。選択的夫婦別姓の採用や中絶の配偶者同意要件撤廃、ジェンダー・ステレオタイプ払拭の取り組みのうながしなどその内容は多岐にわたる。
しかし、最も驚くべきは勧告の根拠となる女性差別撤廃条約の批准から約40年、根本的な指摘を受け続けており、同条約の実効性を高めるために定められた選択議定書の批准を25年もの間「検討中」としていることだ。
条約および選択議定書は人類普遍の理念としての人権の擁護のうち特に女性の人権の擁護を推進するものであり、これに批准することはそれぞれの国がその社会的・文化的事情を考慮しながらもこの理念の実現を自らに課したことを意味する。勧告の冒頭でも、日本国憲法第98条第2項に批准した条約の履行が謳われており、日本が履行の義務を負うことが明示されている。
さらに、日本は国連の人権諸条約に伴う8つの個人通報制度についていずれも批准しておらず、移住労働者権利条約については条約そのものも批准していない。
共生社会が誰もが自分らしく生きられる社会であるとすれば、それはその社会に生きるすべての人が、性別や人種・国籍などにかかわらず人権を尊重されることが大前提である。戦争や様々な抑圧の歴史を経た国際社会が、人権の尊重を基盤によりよい社会の構築をめざす動きに背を向けることは、共生社会の構築以前の問題と言える。
特にジェンダー・ステレオタイプに基づいた様々な制度を条約批准後の40年も変えずにきたことは、現在の少子高齢化や経済社会の停滞の主因とも言えるだろう。税制や年金における年収の壁撤廃の議論がやっと始まったが、この40年の間に制度や社会のあり方を見直していれば、ここまでの人口減少や経済の停滞も避けられたのではないだろうか。
国際社会と協力しながら、女性を含め誰もが自分らしく生きることを妨げる社会・文化・経済・制度的制約の撤廃を、国を挙げて行うことが急務であると考える。
小倉和也(NPO地域共生を支える医療・介護・市民全国ネットワーク共同代表、医療法人はちのへファミリークリニック理事長)[女性政策][ジェンダー・ステレオタイプ][共生社会]
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