いよいよ、すべての団塊の世代が75歳以上に達する2025年に突入した。全国に先駆けて少子高齢化と人口減少が進行する当地域(地方の中山間地域)では、①高齢者単独世帯と高齢夫婦世帯の増加、②多疾患併存患者の増加、③高齢者救急搬送の増加、④医療・介護・福祉ニーズを併せ持つ高齢者の増加、⑤認知症患者の増加、⑥医療・介護・福祉従事者確保の困難、等の課題が顕在化している。まさに都市部で想定される「2040年の地域医療の姿」にほぼ近い状況になっていると言っても過言ではない。
多くの過疎地域では高齢化が進み、「治す医療」だけではなく「支え・寄り添う医療」が必要である。それを実現するためには、医療・介護・福祉の多職種連携が必須で、今後は「地域包括ケア」の枠組みの中で過不足のない医療・介護提供体制の構築が喫緊の課題と考える。
地域医療構想は2014年に制度化され、2025年の効率的な医療提供体制構築を目的に取り組みが行われた。2024年からは2026年度以降の取り組みが議論され、2040年を見据え、入院医療だけでなく、外来・在宅医療、介護等との連携を含む医療提供体制全体の課題解決を図るための「新たな地域医療構想」を策定する方向となった。
これまでは主に、入院医療を担う病院関係者が主体の協議であったが、今後は病院・診療所・歯科診療所・介護施設・行政など、広範囲の関係者が協議の場に参加することになる。他職種の現状や課題をお互い十分に認識していない中で誰が議論をリードし、どのように協議を進めるかがポイントである。総論の議論に終始することなく協議が適切な方向へ進み、地域住民が安心して住み慣れた地域で生活できるような地域医療構想が策定されることを願っている。
また、地方では医療・介護人材の確保も大きな課題である。最近、医師の高齢化が進み、承継できず閉院する診療所が目につくようになってきた。地域の中核病院でさえも入院患者減少と看護師不足の影響で、病床を削減せざるをえない状況になっている。看護師不足は地方の病院にとって喫緊の課題であり、一病院の努力だけでは解決できない問題である。
さらには、介護施設における介護職員不足や在宅介護におけるケアマネージャー不足も地域では大きな課題である。近い将来、必要な医療や介護サービスを提供できない地域も出てくるのではないかと危惧している。厚生労働省は12月に「医師偏在の是正に向けた総合的な対策パッケージ」を公表した。今後は医師だけでなく、介護や福祉に携わる専門職の確保対策の検討も進めて頂きたい。
2025年以降、地方では地域医療を取り巻く環境はさらに厳しくなることが予想される。先に述べた当地域の課題は、今後時期の違いがあるものの全国各地域での課題になると思われる。課題解決への対策を検討するのはまさに今、2025年ではないかと考える。
小野 剛(市立大森病院院長、一般社団法人日本地域医療学会理事長)[地域医療構想][医療・介護人材]
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