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土屋淳郎

登録日:
2021-01-19
最終更新日:
2025-08-20
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  • 「2025年問題を超えて医療DXはどうなる」

    「2025年問題を超えて」。文末でも紹介するが、こんなテーマで全国大会を開催することとなった。さて、2025年を超えた近未来の医療DXは、どうなっているのだろうか。さっそく、2025年7月1日に開催された第7回「医療DX令和ビジョン2030」の公表された資料を見てみると、その進捗状況は今一歩という感じである。

    電子処方箋は、薬局では90%以上が申請済で、80%以上が運用開始済となっているが、医療機関での導入は、13.3%にとどまるとされている。実は筆者の診療所でも、まだ電子処方箋が導入できていない。もちろん、導入によるメリットもある程度は理解しているつもりだ。しかし、現在、筆者の診療所で導入している電子カルテメーカーが「電子処方箋への対応はしない」と明言しており、電子処方箋を導入するためには、電子カルテそのものを変えなくてはならないという状況なのである。

    こうなると「医療DX推進体制整備加算」だけではどうにもならないし、東京都が行っている令和7年度診療所診療情報デジタル推進事業も、実施要項に「電子カルテシステムを初めて導入する医科診療所の整備に係る経費の一部について支援する」とされていることから、補助対象とはならないようだ。電子カルテメーカーも追加開発する体力がないし、医療機関も更新する体力がないというのが現状なのだろう。そのほかにも、必要性を感じないとか、トラブルもあるので利用に不安があるという声も聞かれるので、今後も順調な利用促進は難しそうだ。

    標準型電子カルテに関しても雲行きが怪しい。2025年3月に行われた日本医師会医療情報システム協議会でデモが行われており、α版のモデル事業を開始したとのことである。しかし、7月から標準型電子カルテの開発は、ほかの会社に引き継がれたといった報道もある。開発会社が変わるということは、以後の開発が難しくなると言われていることを考えると、2026年度中の完成本格実施にむけて事業が順調に進んでいくのか不安が残る。

    2030年のビジョンには心配も多い。なお、地域包括ケアに関しては、2040年にむけてさらなる深化・推進が検討されており、医療従事者の不足が深刻化すると言われる中で、医療DXや介護DXはどのように進んでいくのか、さらに心配になる。

    さて、全国医療介護連携ネットワーク研究会では、2025年9月6日に大阪で第19回全国大会の開催を予定している。次世代の医療DXや地域連携についての講演を用意し、2025年問題を超えた未来を紐解くきっかけになることを目的に企画している。ぜひ、ご聴講頂けると幸いである。

    土屋淳郎(医療法人社団創成会土屋医院院長、全国医療介護連携ネットワーク研究会会長)[医療DX][地域連携

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