株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

河野恵美子

登録日:
2025-01-07
最終更新日:
2025-02-18
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  • 「男性育休を導入してみませんか〜次世代の働き方改革」

    医師の皆さんは、国が働き方改革に加えて男性の育休取得を積極的に推進していることをご存じだろうか。

    2021年6月に育児・介護休業法が改正され、2022年4月から段階的に施行されている。具体的には、男性育休制度の周知義務化、出生時育児休業(産後パパ育休)の創設、育休の分割取得、従業員1000人超の企業における男性育休取得率の公表が含まれる。これらの政策が功を奏し、2023年度の男性育休取得率は、30.1%に急増した。

    さらに、2023年6月に閣議決定された「こども未来戦略方針」では、それまで目標とされていた男性の育休取得率(2025年までに30%)について、2025年には、公務員:85%(1週間以上の取得率)、民間企業:50%に、2030年には、公務員:85%(2週間以上の取得率)、民間企業:85%、と目標が引き上げられた。加えて、2025年4月1日には出生後休業支援給付金の支給が新設される予定であり、男女ともに仕事と育児を両立するためのさらなる法整備が加速している。

    一方、外科の現状はどうかというと、2023年に日本臨床外科学会学術集会で初めて「男性の育休」をテーマにしたセッションが設けられ、ようやく議論が始まったところである。2024年の学術集会では3時間にわたるセッションが実現し、15名の演者が登壇して活発な議論が行われた。その議論からは、職場の風土、業務のしわ寄せに対する懸念、キャリアや収入面への不安などから、育休取得が困難である現状が浮き彫りとなった。特に、育休取得の前例がない職場で働く若手医師にとって、そのハードルはいっそう高い。

    所属長による「育休を取ってみたら?」といった声かけが取得を後押しする重要な一歩となることは明らかであるが、長時間労働と自己犠牲を厭わず現場を支えてきた世代の外科医にとって、男性育休を推進することは容易ではないだろう。さらに、現場の慢性的な人手不足もその実現を困難にしている。

    しかし、外科医の平均年齢は50歳を超え、人手不足は長期視点でも深刻である。特にミレニアル世代以降の中堅〜若手医師は、仕事だけでなくプライベートや自己実現を重視し、「働き方の柔軟性」や「持続可能性」を求めており、外科を敬遠する傾向にある。日本専門医機構によるアンケート調査でも、外科を選択しなかった理由は「ワークライフバランスの確保が難しいから」が33.9%と最も多かった。加えて、「出産・育児・子どもの教育に協力的でないから」と回答した割合は19.3%であり、他科がおおむね1桁%なのに対し、外科は突出していた。

    男性育休の普及は、新しい世代の価値観を反映した重要な取り組みである。外科医療の未来を守るためには、働き方や価値観の変化を受け入れ、次世代の医師たちが安心して活躍できる場をつくる必要がある。その第一歩として、部下が配偶者の妊娠・出産を申し出た際には、所属長から「育休を取りますか?」と声をかけることから始めてみてはどうだろうか。

    河野恵美子(大阪医科薬科大学一般・消化器外科)[育児・介護休業法][育児休業外科

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