総務省が12月23日に発表した11月の消費者物価指数で生鮮食品を除く総合指数が103.8となり、前年同月比で3.7%上昇した。15カ月連続で上昇し、第2次石油危機の影響で物価高が続いていた1981年12月の4.0%以来、40年11カ月ぶりの伸び率となった。政府・日銀が定める2%の物価目標を上回る物価高が続く。
特に、食料品やエネルギーといった品目が値上がりしている。食料全体では6.9%、都市ガス代は28.9%、電気代は20.1%上がったという。
円安に加えて、ウクライナ、気候変動の影響による原材料、資源高が大きい。食料安全保障の問題となるが、わが国の食料自給率は低く、かつ自給率が高いとされる米ですら、その肥料は輸入に頼りひっ迫しているという。
その上、人口減少に伴う人手不足だ。これにより賃金上昇も顕著だ。材料費も人件費も増えてくる以上、これから先も物価上昇ベクトルは収まりそうもない。
さて、医療費である。コロナ禍を通して医療の非効率性を叫ぶ声も大きい。しかし、コロナ禍での混乱は、医療に余裕がなかったからではないか。人材も設備もいざという時のために過剰であっても、経営が成り立つような環境にないことが問題だ。実際、12月2日に公開された、日本病院会、全日本病院協会、日本医療法人協会による「2022年度 病院経営定期調査*」の本業たる医業利益の比較では、4期続けて赤字病院割合が60%を超えている。2020年度の79.1%が最も高く、2021 年度は72.5%であった。
医療は構造不況業種と言ってもいいのではないだろうか。公定価格に守られ価格競争が発生しないということは過去の話だ。公定価格に縛られて、原材料価格、エネルギー価格の上昇、人件費の上昇を価格に転嫁できないのだ。
2023年度中間年薬価改定において、大臣合意で「急激な原材料費の高騰、安定供給問題に対応するため、急激な原材料費の高騰により不採算となっている全品目(不採算状況調査の1100品目)について、不採算品再算定を実施して薬価の引上げを行う」となった。ならば、薬価だけではなく診療報酬そのものも、中間年で物価に比例した見直しをすべき時ではないだろうか。
※2022年度 病院経営定期調査−集計結果−(概要).
https://www.ajha.or.jp/topics/4byou/pdf/221214_2.pdf
神野正博(社会医療法人財団董仙会恵寿総合病院理事長)[構造不況業種]
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