新型コロナウイルスの感染様式としては、空気媒介感染がきわめて重要である。そのための感染対策として、手洗い、マスク、うがい、個体間の距離、施設や乗り物における換気の重要性が強調されている。
体内に入ったかぜのウイルスの最初の感染部位は上咽頭を中心とする鼻咽腔粘膜である。かぜの原因となるコロナウイルスの一種である新型コロナウイルスもしかり、鼻咽腔は上気道感染の初発部位であり、病原体を体内で自然に除去、清浄化するかぜの生体防衛システムが発揮される最前線の部位である。新型コロナウイルスが鼻咽腔の細胞に付着し、細胞内に取り込まれ発症するまでの潜伏期間は平均5日間で、発症前の潜伏期から感染力がある1)。無症状患者と同様に重大な感染源となる潜伏期間中に鼻うがい(鼻洗浄)を行い、ウイルスを洗い流してしまうことが新型コロナウイルス感染予防につながるだろう。すべてのウイルスを瞬時に洗い流すことは難しいが、少なくともウイルス量を減らすことはできる。
鼻うがいが新型コロナウイルス感染症の症状を軽減させ、罹病期間を短縮させることを期待する発表が海外でもなされた2)。この報告に従えば、上咽頭の病原体を減らす一法として、鼻咽腔を標的として鼻うがいを行えば自らもコロナに感染せず、人にうつさず感染拡大を効果的に防げるはずだ。鼻うがいは年齢を問わず、家庭で誰でも出来る簡単な手法である。市販されているできるだけシンプルな専用の洗浄器を用い、洗浄液は鼻の粘膜に刺激の少ない0.9%等張食塩重曹水(食塩9g、重曹0.5gを水1Lに溶解、ペットボトルなどに保存し、使用時、必要量を体温程度に温める)を使用し、一方の鼻の穴から注入し、他方の穴から出す。「鼻洗浄は痛い」という先入観を持っている人は少なくないが、体液の濃度に近い食塩水を使用すれば、不快感なく、簡単に実施できる。1人に一台の洗浄器を用意し、家族で毎日1〜数回、鼻を洗う習慣をつくれば、新型コロナ感染症の予防に効果を発揮することが期待できる。「かぜの諸悪の根源、鼻にあり」を合い言葉に、家族、医療機関、介護施設、学校、企業などの理解と協力を得て、鼻うがいを奨励し、新型コロナ感染症の予防に努めて欲しい。
【文献】
1)Gandhi M, et al:N Engl J Med. 2020;382(22):2158-60.
2)Ramalingam S, et al:J Glob Health. 2020;10(1):010332.
白幡雄一(新小岩耳鼻科クリニック院長)[新型コロナウイルス感染症予防]
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