先日、仙台で開催された、第52回日本救急医学会総会・学術集会に出席した。日本消化器外科学会が、男女消化器外科医の手術の執刀の機会を差別しない、ということを宣言した「函館宣言」に至るまでの男女共同参画活動の経緯を話すための出席であった。
ところが、行ってみたら、日本消化器外科学会が真似することができたらよいと思うほどの光景であった。子どもの手を引いて歩く先生、ベビーカーを押して歩く先生、会場の入り口にはベビーカー置き場、と、まるでショッピングセンターの子どもを対象としたイベント会場のようであった。
これを「WINK企画」と名づけているようで、男女共同参画ラウンジというところには、子どもが参加できるいくつかのイベントを行っているブースがあり、子どもが手術のガウンを着て写真を撮ったりしていた。さらに驚いたのが、「WINKセッション」というのが午前、午後を問わず開催され、これはお母さんかお父さんの発表時に子どもが一緒に登壇する、という企画であった。日本救急医学会も思い切った総会・学術集会を開いたものである。
昨今、外科の志望者が減少しており、外科系学会の多くは次世代の育成に不安を感じている。医学部の卒業生を増やしても、科の選択は本人の好みとしている以上、その偏在は避けられない。だとすれば、次世代の卒業生に外科を選んでもらえなければ、外科医を増やすことはできない。
先日、日本消化器外科学会で会員に対して行ったアンケートでは、自分の子どもに消化器外科医を勧めるか? という質問に対し、積極的に勧めると答えた会員は少なく、どちらともいえないと答えた会員が最も多かった。日本消化器外科学会はこの回答に対し、危機感を覚えている。危機感を覚えることはもちろん正しいが、どちらともいえないという回答には、その選択は子ども本人次第、という親のスタンスなのではないかと思う。
本人に外科を選んでもらおうとしたら、外科に関連した楽しい経験をしてもらうことが早道である。そういう意味では、日本救急医学会の企画は合理的と言える。
消化器外科女性医師の活躍を応援する会でも、企業の共催で、腹腔鏡の手技を学ぶ1泊2日のアニマルラボを開催しているが、このときには託児所のみならず、児童には腹腔鏡のトレーニングマシーンを使って腹腔鏡の練習をしてもらうが、かなり好評で、帰り際に翌年の参加を誓って帰る子どももいる。これからは、子どもへのサービスも含めた学会活動が必要なのかもしれない。
野村幸世(星薬科大学医療薬学教授)[WINK企画][男女共同参画ラウンジ]
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