2022年、「掌蹠膿疱症診療の手引き」が日本皮膚科学会から、「掌蹠膿疱症性骨関節炎診療の手引き」が日本脊椎関節炎学会から相次いで上梓され、これまでの診療について改めて整理され、統一見解や課題が示された。関係各位には患者QOL向上への真摯な活動に敬意を表したい。
掌蹠膿疱症は、主に手掌と足蹠の皮膚に無菌性膿胞を形成し、ひび割れや膿胞の多発が生じると痛みが強くなり、歩行困難や手が使えないことで洗髪できないなどQOLを大きく阻害する病変である。この病変には、胸骨・鎖骨・肋骨などに強い痛みが生じる掌蹠膿疱症性骨関節炎が合併症として生じることもある。また、その誘因に扁桃炎や歯性感染症が重要であることが明らかとなっている。すなわち、皮膚科を中心として、整形外科、耳鼻咽喉科、リウマチ科、歯科など複数の科の連携が欠かせない疾患である。しかし、この連携というのは、言葉では簡単に表現されるが、実際は非常に難しいことが多い。
掌蹠膿疱症は、歯科疾患の根尖性歯周炎や歯周炎(歯槽膿漏)の治療により軽快する例が多く、歯科疾患への対応は診療上重要な位置を占めている。この医科と歯科の連携で、まず障害になるのが用語についての共通理解の不足である。この点について関連学会でも認識され、学会レベルで解消のための努力がされており今後良い方向に向かうだろう。
用語以外で歯科の問題としては、皮膚科医からの依頼を受け、どこをどこまで治せば効果が出るのか、そのゴールが見えないことがある。すなわち、治療計画の立案に不確定要素が多く、皮膚科医の期待に沿えない場合がある。まさに、その時、医科と歯科の顔の見える実質的な連携が必要になる。
2022年12月11日、掌蹠膿疱症医科歯科連携研究会が30数名の医師および歯科医師の参集により立ち上がった(筆者も参加)。この会を通じて顔の見える関係を強化し共通理解を深めることで、医科歯科連携のモデルを構築することは、この領域の医療を大きく進めることになるはずである。また、医科歯科連携上での共通課題のひとつは、どの歯を治せば掌蹠膿疱症が軽快するかを的確に判断できる診断法の研究開発だろう。さらにこの会では、病態解明や予防までを含めて検討を行うワーキンググループが立ち上がる予定である。
まさに2022年は掌蹠膿疱症にとって歴史的な第1歩の年になったのではないかと確信し、2023年からの活動に注目して欲しい。
槻木恵一(神奈川歯科大学副学長)[掌蹠膿疱症医科歯科連携研究会][手引き]
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