日頃、気軽に入るカフェですが、コロナ禍でこの数年間店舗数の伸びは止まり、むしろ減少しています。その市場規模は8000億円程度です(2020年※1)。市場としてはあまり大きくありません(たとえば、保育サービスは2017年で、3兆円を超えています※2)。また、新しい店舗をあちこちで見る割には、その増減幅も大きくありません。実はほぼ成熟した市場です。
大手チェーン系のカフェは、アルバイトスタッフに支えられていると言えます。正社員はいるとすれば店長のみ、または、エリアマネージャーが数店舗を監督している、というところが多いようです。特に、学生のアルバイトの方が多く、大学生を診察する臨床現場では、カフェでアルバイトをしたことがない大学生はいるのだろうか、と思うほどです。
全般的に「不満の少ない」職場という印象があります。同じ飲食業でも、居酒屋でアルバイトをする方の不満、負担感は時に大きいものがあります。そのため、学生時代はずっと同じカフェで勤務する方が多いのです。
当初は、「なんとなくかっこいい」というイメージによるものかと考えていました。しかし、この差を生む、より実質的な背景が少しずつ分かってきました。まず1つは、チェーン系カフェでの従業員教育があります。マニュアルがあるということよりも、アルバイトに対するとは思えないような、濃厚で体系的な教育システムとなっています(例:毎月のフィードバック面接、成長目標設定、レクチャー等)。
また、「位」がたくさんあります。本人の成長目標によって、ステップを登っていけるような仕組みになっています。その「昇進」はかなり透明性が高くでき上がっています。
そういう意味では、アルバイトスタッフが理解して仕事をできる環境にあること、行う作業が目に見えること、自分の成長を実感できることに加えて、平等感があること等が良い循環を生み出しているのかもしれません。また、労働時間としても学生にとっては試験前には休める等、柔軟性が高い条件もあります。
カフェで働いた経験を持つ方が転職する場合は、カフェ等の接客業になることが多いようです。特に、一定の経験のある方は「接客」について自信がつくようです。何年かお付き合いのある患者さんでは、「成長した」感がある方が少なくありません。
今回で、このシリーズは終了となります。日常臨床の小さい窓からみた労働市場をお伝えして参りました。お付き合い頂き、ありがとうございました。
※1 日経コンパス:喫茶店・カフェ. 2022.
https://www.nikkei.com/compass/industry_s/0641
※2 矢野経済研究所:保育園・託児所市場に関する調査を実施. 2019.
https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2209
岩﨑康孝(四谷いわさきクリニック院長)[メンタルヘルス][労働市場]
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