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田中章太郎

登録日:
2021-02-17
最終更新日:
2022-01-11
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  • 「『ザイタク医療』⑫〜ザイタク医療〜」

    2021年2月から「識者の眼」で1年間連載させて頂いた。私達が取り組む『ザイタク医療』の実際を具体的にお伝えしてきた。読者の方からこんな質問があった。『在宅』医療と『ザイタク』医療はどう違うのか? と。簡単に言うと、『在宅』は一方向、『ザイタク』は双方向。双方向のザイタク医療とあえて謳うのは、市民・患者と医療者の対話が非常に減っており危惧しているからだ。

    最近、在宅医療の依頼の中には医療依存度(本連載⑨、No.5087に詳細)の高い患者が増えている。在宅酸素療法、人工呼吸器、持続強心剤点滴、中心静脈高カロリー輸液、胃瘻、人工透析、尿カテーテル等々。時に、患者から「この延命治療は中止できないのか?」「本当は、この延命治療はしたくなかった。こんなつもりじゃなかった」といった言葉を聞く。インフォームド・コンセントといった使われて久しい意味合いのものでは解決せず、両者はどこか交わってもいないとさえ感じてしまう場面に遭遇することが増えた。

    現場では、アドバンス・ケア・プランニング(人生会議)と言った考えのもと、医療判断決定において市民・患者の介入を求めている。しかし、現実には普及していない。それはなぜか?おそらく、市民・患者の考える思いと、医療者が要求していることは、乖離しているからだと愚考する。誤解を恐れずに言うと、人生会議というものに対し医療者はあくまでもケア(医療行為)の意思決定を求め、一方市民・患者は生活の質に関することや死生観をイメージしている。つまり、アドバンス・ライフ・プランニング(筆者は人生会議とは別の表現がよいように思うが……)のようなイメージに近いように思う。この隔たりは、立場の違いにより、おそらく埋まらないだろう。

    しかしながら、まずは立場の違いの相互理解ができれば前進するのではないだろうか?この相互理解の場をつくり、市民・患者と医療者が対話を始めるべきだと感じる。あえてザイタク医療が双方向だ、と言ってきたのはこういう意味である。まだまだ在宅医療は一般に普及していない。まして、双方向でつくり上げるザイタク医療の認知は非常に低い。新年2022年は、このザイタク医療の認知を高めるべく玉手箱研究会〔代表:桜井隆先生(さくらいクリニック院長、尼崎市)〕を再始動し、市民・患者とともに対話していきたい。1年間、ご精読ありがとうございました。また、どこかで続きを書きたいと思う。

    田中章太郎(たなかホームケアクリニック院長)[在宅医療]

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