世の中は加速度的に変化しています。実業界では巨大な事業体だったところが瓦解したり、買収されたりする一方で、無名だった会社が躍進したりと有為転変が感じられます。医療界でも地域で大きなシェアを誇っていた病院が失速したり、一方で新しい企画を打ち出して急速に集客力を増す病院が現れたりと、変化の少ない医療界も少しずつ変わってきています。
厚生労働省はずっと低医療費政策を継続していますが、国民にとってよりよい医療体制になるように常に制度を改革しています。その方針を無視して、唯我独尊で現状のまま固定している病院には明日の存続は厳しいでしょう。慢性期病院でも、いつまでも「寝たきり患者収容病院」として、適切な治療をおろそかにして入居施設と変わらないままでは、病院としての存在意義は認められないでしょう。
病院とは、病気の患者さんを治療により改善させて自宅に戻すところです。そのことを忘れたり、放棄したりしている病院のままでは信頼されないでしょう。きちんと慢性期疾患を治療する病院として機能を向上させ、回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟へと脱皮していってほしいですね。
急性期病院でも、いわゆる「なんちゃって急性期」と言われる、名前だけで実態の伴わない病院が実はたくさんあるのです。健康なときは、自宅でほとんどの人が個室で暮らしています。健康なときには個室なのに、病気になったら1人当たり4.3m2の6人部屋に入院させられてしまいます。
2000年の医療法改正でそれまでの「その他の病床」が療養病床と一般病床に区分され、療養病床は1人当たり6.4m2以上、4人部屋以下となりましたが、一般病床は既設の場合は1人当たり4.3m2以上、6人部屋でもよく、古く狭くて多床室のまま療養病床に転換できなかった病院があります。慢性期患者が多いまま、実態の伴わない「自称急性期病院」を運営してきたこうした病院も、改善し、状況に応じた進化をしていくべきでしょう。
患者は、できるなら今までの生活に戻れるように、自宅で療養できればよいという至極もっともな思いを持っているのです。「癌のターミナル」患者でも、殺風景な病院で死を迎えるより自宅ほどよいところはない、住み慣れた生活環境で最期を迎えたいと思うでしょう。必要な治療があれば、医療側が患者のところに足を運ぶのが親切というものですよね。今まで病院の都合中心でまわっていたので、これからは患者中心の医療に変化していかなければなりません。とにかく、病院は変化し、進化しなければなりません。
武久洋三(平成医療福祉グループ会長)[慢性期病院][急性期病院][患者中心の医療]
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