株式会社日本医事新報社 株式会社日本医事新報社

児島悠史

登録日:
2025-07-24
最終更新日:
2025-09-03
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  • 「OTC医薬品の頭痛薬に含まれる『催眠鎮静薬』のリスク」

    日本人の3人に1人が頭痛持ちである」、とする調査があるほど、現代人にとって頭痛は身近な症状です。そのため、セルフメディケーションにおいて、ドラッグストア等でも購入できる頭痛薬(OTC医薬品)が、重要な役割を果たすことになります。

    ところが、こうしたOTC医薬品には、医療用医薬品としては馴染みのない、不思議な成分が配合されていることがよくあります。その1つが、「ブロモバレリル尿素」や「アリルイソプロピルアセチル尿素」といった「催眠鎮静薬」と呼ばれるものです。

    「催眠鎮静薬」とは、文字通り“催眠”と“鎮静”の作用を持ち、古くは今から100年ほど前に、鎮静や抗てんかんを目的に使われていた薬です。しかし、この薬は依存・習慣性があるほか、中毒症状や脳性紫斑病による死亡例の報告も相次ぎ、1960年頃には既にリスクの観点から問題視されていました1)2)。そのため、ベンゾジアゼピン系薬剤などが登場すると、医療現場ではほぼ使われなくなっていったような薬です。

    そんな「催眠鎮静薬」ですが、これら依存・習慣性や中毒リスクについてほとんど周知されることなく、現在日本で販売されている解熱鎮痛薬398商品中218商品に配合されています(著者調べ)。日本人は、OTC医薬品を選択・購入する際、成分をあまり確認せず、ブランド名やパッケージのフレーズで判断する傾向にあるため3)、「催眠鎮静薬が入っているという事実を知らないまま、催眠鎮静薬の配合されたOTC医薬品を使っている」可能性もあり、大きな問題と言えます。

    通販サイト等では、「催眠鎮静薬」を配合した商品が売り上げランキングの上位を占めています。薬を飲んで眠ってしまいたいような状況では役立つこともありますが、「薬を飲んで仕事や勉強を頑張りたい」と考え、OTC医薬品を購入する人も多くいます。安易に日常的な連用をすることがないよう、医療従事者からの声かけと周知の徹底から始めていく必要がありそうです。

    【文献】

    1) Adamson Jr JS, et al:Ann Intern Med. 1966;65(4):749-52.

    2) JORON GE, et al:Can Med Assoc J. 1953;68(1):62-3.

    3) Aoyama I, et al:Asia Pac Fam Med. 2012;11(1):7.

    児島悠史(薬剤師/Fizz-DI代表)[薬剤師OTC医薬品催眠鎮静薬

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