医師の働き方改革が2024年4月にスタートし、1年以上が経過した。それに連動する形で「医学教育モデル・コア・カリキュラム」(令和4年度改定版)にも、医師の働き方改革に関する学修目標が追加され、2024年度以降の入学生から適用されている。
具体的には、以下のような記載がある。
さらに、「医師国家試験出題基準 令和6年版」の労働基準法の備考欄にも、「医師の働き方改革」と注記が加えられた。これらの変化は、医学教育における医師の働き方改革の重要性が、いっそう明確になったことを示している。
筆者は、コアカリキュラム改定に先立ち、2020年度から厚生労働省の医学生向け労働法教育事業に関与し、講義の実施方法の検討や、指導者用教材「明日の医師たちへ」の作成を官僚と協力しながら進めてきた。モデル講義は2021年から開始し、既に24校で実施されている。講義内容は、第1部で、医師の働き方改革の趣旨・目的、医師の働き方の実情等を医師が説明し、第2部では、労働法の基礎的な知識に関する内容を弁護士が説明する構成となっている。2023年度からは医学生だけでなく、臨床研修医を対象に労働法教育が始まっている。
昭和・平成の時代に「医師は労働者である」と口にすれば、「医師は高度な専門知識を持ったプロフェッショナルであり、労働者ではない!」と一蹴されるのが常だった。しかし、医師が労働者であることを前提とした制度設計が進み、もはや「医師は労働者か否か」といった議論は過去のものとなりつつある。「かつてはそう言われた時代もあった」と振り返る日が遠からず訪れるだろう。
ただし、こうした変化の中にあっても、医師としてのプロフェッショナリズムを損なってはならない。医師の仕事は、患者の生命に関わるものである。その責任の重さを常に意識し、最善の医療を提供しなければならない。働き方改革が進み、ワークライフバランスの重要性が強調される一方で、医師としての本質を守り、患者との信頼関係を築く倫理観をどう維持するかは、これまで以上に問われることになる。このバランスを見失えば、責任感や倫理観を欠いた医師が増え、医療現場が混乱し、最終的には医療崩壊につながる可能性も否定できない。今まさに、本当の意味で「すべての人」の生命と健康に資するという、きわめて高度な自律と成熟が求められているのである。
河野恵美子(大阪医科薬科大学一般・消化器外科)[医師の働き方改革]
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