石巻市にある児童館『らいつ』に感動している。
職員に話をきいた。
「この児童館は子どもたちが運営しています」
一瞬どういう意味かわからず、もう少し話を聞くことにした。
環境は……
「うちの児童館は『禁止事項』を貼ることがほとんどありません。たとえば『走っちゃだめ』というのは、小さな乳幼児が近くにいるときです。そういうときは子どもと話しますが、大抵の子どもは乳幼児のそばでは走りません」
このことを私が本当の意味で理解するには、数時間必要だった。
建物の設計は……
「図書室を『机と椅子』にしないと決めたのは子どもたちでした。『ゆったりできたほうがいいよね』とのことで床を絨毯にしたりソファーを置いたり。色も青のほうが落ち着くなどと決めて」
「建物を建てるとき壁をコンクリートでつくるか、木でつくるかも子どもたちが決めました。コンクリートがかっこいいという意見もありつつ、最終的には落ち着くほうが選ばれました」
予算の使い方は……
「先日余った予算3万円の使い道について子ども会議で話し合われました。利用する皆の声を聞こうとなって、アンケートを取ろうということに。アンケートを取る方法も内容も子どもたちが決めました」。
ホームページの最初に「子どもの権利には『いきる』『育つ』『守られる』『参加する』の4つの権利があります」とある。私は現場を見終えた後、『理念だけではなく実践している』ということに感動していた。特に、『子どもが子どものことを決める、子どもが運営するのがよいのだ』という経験を大人たちもしていることに。
子どもは、本当は自分が何をしたら楽しいか、うれしいかを知っている。地べたで寝転んだり、水たまりを飛び跳ねたり、泥んこで遊びたい。だけれども、子どもは大人社会の都合でいろいろと制限されていく。制限される内容は自然豊かなところか、都会かでも全く異なるが、それらは一緒くたになって「社会規範」という名前がついていたりする。
子どもにはまだ無理だと大人が思い込むと、子どもが社会参加するのに制限がかかる。子どもの声は大人に観察されたものが翻訳されて社会で表現される。すると、子どもの本当の想いがこの社会には存在しないまま社会は設計されることになる。それで大人になったら急に自分で決めろと言われていくことも少なくない。たとえば選挙も。『らいつ』では子どもの頃から民主主義にちゃんと参加できている。
『らいつ』の事業には「子ども会議」「子どもまちづくりクラブ」「子ども企画」などがある。子ども会議や経緯をみると、その思いがここで実現されていると、感じることができる。
森川すいめい(NPO法人TENOHASI理事)[子どもの権利][社会規範][民主主義]
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