本題に入る前に、筆者が以前寄稿(No.5278)した中で、パラメディカルは、コメディカル同様に医師との上下関係を連想させる言葉であるため、使用を控えるべきところ、誤って使用したことを深くお詫びいたします。
2025年5月に、国立大学臨床検査技師教育協議会(国臨教)総会が東北大学で開催された。21校からなる国立大学内の臨床検査技師養成校の専攻主任、国臨教理事および、国臨教関係者らが参加した。国臨教では、近年の医学ならびに医療の取り巻く環境の急速な変化に対応し、臨床検査の立場からこれからの医療の発展に寄与するためにどのような教育活動を進めていくべきかを議論している。今回も様々な意見が交わされ、いくつかの項目について活動することとなった。
総会後、理事会メンバーと一部の参加者を交えて懇親会が行われた。そこで、医療現場での臨床検査技師を含む、医師以外の医療従事者の呼び方について話題になった。その中で理事会メンバーの1人が、①「パラメディカル」は、医師に対する上下関係を明確に表す言葉であり、医療現場では不適当で、使用厳禁となっていること、②「コメディカル」は、協同を意味する「コ」という言葉が医師の補助的な意味合いで、上下関係を暗示させるほか、和製英語であるため、英語圏の人が聞くと、「お笑い」を意味する「コメディ」と受け取ることもあり、適当ではない。医師以外の医療従事者も「メディカルスタッフ」、あるいは「医療従事者」と呼ぶのが妥当ではないか、と話された。
法律上は、医師に医療行為の決定権があり、ほかの医療従事者は決定事項に従って医療行為を行う。しかし、医療が日進月歩で高度化・複雑化していく中、医師がすべてを理解、把握し、ほかの医療従事者に一方的に医療行為を命ずるのは不可能であるため、ほかの医療従事者との協力体制により、チーム医療を進めていくことが必須である。そのような状況下で、医師と、そのほかの医療従事者との上下関係を取り払う意味で、「メディカルスタッフ」と呼ぶのは適当ではないかと思う。
「メディカルスタッフ」が、チーム医療を円滑に進めていく上で重要なのは、専門性を高めつつ、医療全体を俯瞰してよりよい医療のあり方を常に考えることである。そして、専門分野の責任者として、ほかの専門分野のスタッフと対等にディスカッションできるレベルに達することである。その中で医師は、医療行為の最終責任者として、最良の医療方針をプログラミングし、ほかの医療従事者に方針をわかりやすく説明しつつ、彼らから方針に対する意見をうまく聞き出し、できる限り最高の診療・治療・ケアを統括する必要がある。
これからの「メディカルスタッフ」として活躍するための臨床検査技師養成は、生命科学、医学、臨床検査学の学問的な基礎知識を有するとともに、医療に対する深い造詣を持ち、臨床検査に対する高い専門性を活用しながら、ほかメディカルスタッフと協力し、最高のチーム医療に貢献することを目的とすべきである。そのためには、医療や保健全体を考えて行動できる、自立したメディカルスタッフ人材を育成していくことが大切であると考える。
岡本成史(大阪大学大学院医学系研究科生体病態情報科学講座教授)[臨床検査技師][メディカルスタッフ]
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