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鈴木邦彦

登録日:
2020-02-13
最終更新日:
2024-05-28
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  • 「超高齢社会を乗り切るための三位一体の取り組みを進めるには財源確保が必要」

    ■このままでは中小民間病院は立ち行かなくなる

    2024年度診療報酬改定の全貌が明らかになりました。6年に一度の介護報酬との同時改定であるとともに、2025年を目標年とした社会保障・税一体改革の仕上げの改定とも言えます。

    昨年末に決定した診療報酬改定率は本体プラス0.88%と近年になく高いものでしたが、蓋を開けてみると賃上げ分以外は実質マイナス改定とも言えるほどの厳しい内容でした。そもそも物価高騰や賃上げ分もきちんと点数に上乗せされたかについては、はなはだ心細い状況と言わざるをえません。特に物価高騰への補塡はまったくなされていない状態です。

    今回の改定で筆者が最も懸念しているのは、もはや診療報酬は医療機関の経営を維持する役割を放棄してしまったのではないかという点です。公定価格を維持するのであれば、物価高騰分は必ず補塡されなければなりません。このままでは長期の経営戦略は立てられず、2年ごとの診療報酬改定の改定率に左右される、その場限りの運営しかできなくなってしまいます。

    もちろん改定率に見合った賃上げはしますが、その後の経営を圧迫するような本来の意味でのベースアップはできません。そしてこれからも、賃金は上がっても2年ごとに今回のような消耗戦が繰り返されていけば、体力の弱い民間中小医療機関から経営が立ち行かなくなることでしょう。今後の診療報酬改定財源確保に向けては、医療界挙げての働きかけとともに、柔軟かつ大胆な発想が求められています。

    ■2025年に向けて三位一体の取り組みを進めた点は評価できる

    一方で、今回の診療報酬改定が、2025年をめざした改革の2本柱である地域包括ケアシステムの構築と地域医療構想の実現、およびかかりつけ医機能の充実・強化の三位一体の取り組みを着実に前に進める改定となったことは評価すべきと考えています。

    地域包括ケアシステムの構築に向けては、これまでの職種やサービス間の連携から医療機関と介護施設間の連携に進化し、ICTの活用が推進されることになりました。地域医療構想の実現に向けては、急性期は7対1(急性期一般入院料1)以上であることが明確になり、新たに回復期のトップランナーとして地域包括医療病棟が新設されました。かかりつけ医機能の充実・強化に向けては、2025年度からかかりつけ医機能報告制度が開始されることを見据えて、その地ならしとして生活習慣病管理料(Ⅱ)が新設されたと考えられます。

    筆者は現在、地元の茨城県医師会長と日本在宅療養支援病院連絡協議会(在病協)会長を務めています。医師会長としては、新たに賃上げや生活習慣病管理料(Ⅱ)に取り組む医療機関に丁寧に説明を行う必要があると考えています。在宅療養支援病院については、地域包括ケアを支える地域密着型中小病院として、高度急性期大病院とともにこれからの病院の2つの軸の1つになれるように取り組まなければなりません。そのためかかりつけ医機能を発揮しながら、在宅医療を含む地域包括ケアシステムの構築において、地域から必要とされる存在になることをめざしていきます。

    鈴木邦彦(茨城県医師会長、医療法人博仁会志村大宮病院理事長・院長)[地域医療・在宅療養支援病院

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